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デモ取引では順調だった
武藤孝幸のマネースクールでオプション取引を学び始めて、最初の半年間はデモ取引で練習していた。武藤孝幸のマネースクールではまずデモ取引で慣れていくよう指導されていて、実際の市場データを使いながら練習できる。ルール通りにエントリーして、ルール通りに決済する。それを繰り返していたら、デモ口座の残高は着実に増えていった。
「なんだ、意外とできるじゃないか」
毎回の取引で少しずつプレミアムが積み上がっていく感覚は、正直に言って気持ちよかった。最初の1ヶ月は恐る恐るだったのが、3ヶ月目くらいから「今回はもう少しポジションを大きくしてみよう」と欲が出始めていた。デモだからリスクはゼロ。失敗しても痛くない。その安心感が、僕に変な自信をつけてしまった。
武藤孝幸のマネースクールで教わった通りにやれば、利益が出る。そう思い始めた頃、僕は大きな勘違いをしていた。デモで上手くいったのは「僕のセンスが良い」からではなく、「ルールに従っていたから」だということを、まだ理解していなかったのだ。
実取引で何をやらかしたか
デモ取引を卒業して、いよいよ実際のお金で取引を始めた日のことは今でも覚えている。最初の数回はデモの感覚そのままに、小さいポジションで慎重にやっていた。そして利益が出た。
問題はそこからだ。
「もっとポジションを大きくすれば、もっと稼げるんじゃないか」
プレミアム(手数料収入)の金額は、ポジションの大きさに比例する。デモで得た自信が、僕の判断を狂わせた。証拠金使用率なんて、ほとんど気にしていなかった。「まだ余裕がある」と思い込んで、次々とポジションを追加していった。
画面が真っ赤になった夜
米国株のオプション取引だから、市場が動くのは日本時間の深夜だ。その日、寝る前に何気なくスマホで口座を確認した。夜の11時過ぎだった。
画面が真っ赤だった。相場が大きく動いていて、含み損の数字が目に飛び込んできた。証拠金使用率が一気に跳ね上がっている。
頭が真っ白になった。「早く何とかしなきゃ」という焦りだけが先行する。ルールなんてどこかに吹き飛んで、とにかくこの含み損をなんとかしたい一心だった。
結局、その場で慌てて損切りした。冷静に振り返れば、もう少し待てば回復していた可能性もあった。でもあの瞬間、画面の赤い数字を見続ける精神力は、僕にはなかった。
あの夜から翌日のこと
損切りした後、しばらくスマホを握ったまま動けなかった。金額自体は生活に影響するほどではない。でも「自分の判断で損を出した」という事実が、ずしりと重かった。
日付が変わっても眠れなかった。布団に入っても目が冴えて、深夜1時、2時と米国市場の動きをスマホで追い続けていた。もう損切りは済んでいるのに。見たところで何もできないのに。やめられなかった。
翌朝、朝食の席で妻と向かい合っても、何も言えなかった。投資をやっていることは話してあるが、「昨夜やらかした」とは言えない。普通に振る舞いながら、頭の中では「あのときポジションを大きくしなければ」と、ぐるぐる同じことを考えていた。その日は仕事中もずっとそわそわして、何度もスマホで口座を確認してしまった。
そこから学んだ3つのこと
1. ルールは守るためにある
マネースクールで教わったルールは、相場が順調なときではなく、荒れたときに自分を守るためにある。デモ取引では「ルールを守った結果、利益が出た」のに、実取引では「ルールを破った結果、損失を出した」。答えは明白だった。
2. 小さく始めることの大切さ
「もっと稼ぎたい」という欲は、投資において最大の敵だと痛感した。特に実取引を始めたばかりの段階では、小さいポジションで経験を積むことが何より大事だ。証拠金使用率に余裕を持たせておくことで、相場が急変しても慌てずに済む。
3. 感情で動かない
含み損を見てパニックになり、衝動的に損切りしてしまった。あの判断が正しかったかどうかは、今でもわからない。ただ確実に言えるのは、「感情で動いた判断は、たいてい後悔する」ということだ。事前にシナリオを決めておいて、そのシナリオ通りに動く。地味で退屈なやり方だが、それが正解だった。
失敗を踏まえて、今はこうしている
あの失敗以降、僕は取引のルールを明確に決め直した。
- 証拠金使用率は常に50%以下をキープ。相場が急変しても耐えられる余裕を残す
- ポジションは小さく。「もっと大きく」という誘惑が来ても、余裕を持てる範囲でしかエントリーしない
- 取引前に「最悪のシナリオ」を書き出す。この取引で最大いくら損する可能性があるか。それを受け入れられるか。受け入れられないならエントリーしない
地味だ。退屈だ。でも、このルールに変えてから、夜眠れなくなることはなくなった。プレミアムの金額は小さいけれど、毎月着実に積み上がっていく。それでいい。
失敗したからこそ、今がある
あの失敗がなかったら、僕はたぶんもっと大きなポジションを取り続けて、いつかもっと大きな損失を出していたと思う。早い段階で痛い目を見たことで、「ルールを守ること」の意味が身に染みてわかった。
投資で失敗しない人はいない。大事なのは、失敗から何を学ぶかだ。50代の僕がやらかした話が、これから始める誰かの参考になれば嬉しい。
※投資にはリスクが伴います。成果には個人差があります。本記事は個人の体験に基づくものであり、特定の投資手法を推奨するものではありません。